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2020-03-25

アメリカの羊毛を紡ぐ講習会

亜紗のシアトル便り

2月の13日と14日にシアトルの郊外タコマ市(Tacoma)で開催されたイベントに参加しました。シアトル近郊では、大きめのファイバーイベントの一つです。
例年まではマドローナー・ファイバー・アーツとして開催されていたこのイベントは主催者が変わりレッド・アルダー・ファイバー・アーツ(Red Alder Fiber Arts)として名前を改め開催されました。



旧名「マドローナー」も新名「レッド・アルダー」も樹木の名前です。緑に溢れたシアトルらしい名前ですね。
ただ名前が変わっただけでなく、新たにインディー染色家の方々も加わり例年と比べてマーケットもちょっと新しい感じがしました。もちろんハンセンクラフツやクレメス・アンド・クレメスの定番の出店者も多くいましたが。
私は2日共クラスを受けてうっかりマーケットの写真を取り損ないました…ごめんなさい!ハンセンクラフツのブースの写真はハンセンクラフツのベスに撮って貰ったものです。



マーケットとは別に今回の’’めだま’’の特別展示で、75種類の羊毛の展示がありました。羊の看板には羊の写真とその特徴や詳しい情報、その前の受け皿には羊毛のサンプル、紡がれたサンプル、更には編まれたサンプルがありました。そしてなんと「全て触っていいですよ」と書いてあるではありませんか!!
75種類。アメリカと海外からの種も含め、こんなにも沢山の種類の羊毛が集まる機会はなかなかありません。聞いた事はあっても実際に見たことの無い希少種もあり、興奮しながらみて回りました。
友人にどれが好き?と聞かれましたが何回もグルグルと回ってもそれぞれに魅力があってそれは答えられませんでした。



一日目に参加したクラスは特別展示でも紹介されていた「米国の羊毛6種類」というテーマのワークショップでした。先生はデヴィン・ヘルマン(Devin Helmen)という男性の先生。アメリカ中西部にお住いの方で、西海岸のイベントではあまりお目に掛からない先生です。
子供の頃から編み物が好きで、遂には紡ぎにはまってしまったとおっしゃる先生は殆どの糸をドロップ・スピンドルで紡がれるそうです。もちろん糸車は持っているのですが移動が多く、移動中に紡ぐことが多い為結局ドロップ・スピンドルを使うことが多いとか。

その手付きは自分の手を止めて見惚れてしまう程滑らかな動きでした。ワークショップ内で、参加者の多くが「ミニ・スピナー」を使っているのを見て、とても興味深々のご様子・・・・あとでハンセンクラフツのベスとケビンに聞くと、ミニ・スピナー・プロを購入されたと聞きました。

各羊毛のサンプルは洗われたフリース状が1オンス(約28g)×6種類。デヴィンはフリースを洗う時には触れるとグリスが残っているのが分かる程度に洗うそうです(手がベタベタになるほどではありませんが)。フリースをカサカサになるまで洗ってしまうと繊維が弱くなるので、糸が完成してから洗ってすべてのグリスを洗い流すのが彼の方針だそうです。羊の特性のレクチャーを聞きながら、参加者それぞれサンプリングをします。

私は新しい羊毛を紡ぐ時にはその羊毛の特質を触れて見極める為に、まず梳毛と紡毛の2本の双糸を紡ぎます。6種類それぞれを「ミニコームによる梳毛」と「ローラグからの紡毛」に紡ぎ分けてみる実験をしました。

梳毛:フリッカーを掛け、ミニ・コームから直接紡いで梳毛のサンプルを紡ぎ、それをアンディアン・プライで2本の双糸にしました。

紡毛:軽くフリッカーをかけ、ハンドカーダーにかけ、ローラグを作り、紡毛のサンプルを紡ぎ、更にアンディアン・プライで2本の双糸にしました。

写真は全て上にその羊毛、左が梳毛、右が紡毛のサンプルとなります。サンプルは全て撚り止め後の写真です。


サンプル1)Gulf Coast(ガルフ・コースト)
ガルフ・コーストと言えばハリケーンがよく来る東南部でジメジメしていてとても羊がよく育つイメージでは無いのですが…スペインやフランスから連れて来られた羊が半野生化してしまったのがガルフ・コースト。クズ野菜や雑草を食べて半野生の羊として生き延びたそうです。今ではレア―・シープになってしまっているこの羊毛はフェルトには最適なフリースだと教わりました。弾力性のある羊毛でしっかりした感じがして梳毛でも紡毛でも気持ちよく紡げました。手袋や靴下などにはいい羊毛の様です。

Gulf Coast(ガルフ・コースト)



サンプル2)Tunis(ツゥーネス)
1799年に北アフリカからお土産として米国に渡った羊です。食用に育てられ、暑い気候に耐えられるこの羊も東南部で増えたそうなのですが南北戦争で随分と多くの群れが殺され、それ以来頭数が回復できずに今では保護が必要な種となってしまいました。食用として育てられたにも関わらず羊毛はとても柔らかくクリンプがしっかりしていて弾力性と艶がありとても紡ぎやすいものでした。こちらも梳毛、紡毛問わず紡ぐ事の出来る品種です。編むと網目がとてもよく現れ模様編みには最適とデヴィンの意見。確かにミニ・コームから紡いだ糸は梳毛に紡いだにも関わらず糸にまだフワッと感があって双糸がはっきりしています。最初のガルフ・コーストに比べ柔らかく、セーター等の衣類に向いているようです。

Tunis(ツゥーネス)


サンプル3)コロンビア(Columbia)
1912年に西部の草地で育てられる羊を求め農林水産省が羊毛の為改良した品種。以前の種類に比べこしのある羊毛で梳毛と紡毛の違いが一番大きく出た羊毛でした。梳毛、紡毛共に心地よく紡げたので用途によって使い分けるのがよいのかなと思います。デヴィンはカーデガン等はとても着心地がよく、へたりにくいと言っていました。

コロンビア(Columbia)



サンプル4)モンタデール(Montadale)
1932年により良い食用とより良い羊毛を求めにコロンビアとチェヴィオットをかけて改良しようとした中西部の羊。柔らかく、いつまでもミニ・コームから直接紡げる心地よさ。紡毛も同じ程心地よく紡げました。ツゥーネスに比べると艶が少なく、弾力性にも欠ける気がしましたがスカーフや帽子等直接肌に着れる柔らかさでした。私は織物に向いているのではないかと思います。

モンタデール(Montadale)



サンプル5)カルフォルニア・レッド(California Red)
1970年にフリースを刈る必要の無い食用の羊を改良しようとしてツゥーネスとバーベイトス・ブラックベリーをかけた羊。この羊も現在保護が必要な羊となりました。名の通り赤いケンプを持つこの羊、刈らない訳にはいきませんがラノリンが少ない品種だそうです。紡毛でも問題無く紡げましたが私の好みからするとコームに掛けて梳毛で紡ぐのが一番いいかなと思いました。梳毛の糸は艶があって素敵な衣類になりそうです。

カルフォルニア・レッド(California Red)



サンプル6)CVM (California Variegated Mutant)
1960年代にカルフォルニア州で飼っていた白いロメデール(Romeldale)から色の付いた羊をお互いにかけて産まれた色の付いた羊。色の付いたフリースは工場には売れなかった為、手紡ぎ用として販売された羊毛。この羊も現在保護が必要な羊です。ロメデールとCVMはここ北西部にも飼っている牧場が居るのでシアトルでも見かけます。柔らかく、クリンプがあって弾力性がある羊毛です。紡毛でも梳毛でも心地よく紡げる羊毛です。

CVM (California Variegated Mutant)



今回のクラス内では、The Livestock Conservancy (絶滅に近い家畜の品種を保護する団体)が立ち上げた「Shave’Em to Save ‘Em」(刈って保護しよう)というプログラムが話題になりました。数年前Deb Robsonの教室に参加した時にも聞いたことがありました。

レア―・シープとファイバー・アーティストと繋げるプログラムで、ファイバー・アーティストがレアーシープの羊毛を利用する事によって保護を持続しようというプログラムです。
レアーシープを守る=毛刈りをし、使うこと。飼育している人に対価を払うこと。当たり前のことですが、これが続いていかないことには、品種を守ることはできません。

私の隣に座っていた方がこのプログラムを通して購入したレア―・シープを紡いで織ったポンチョを皆に見せてくれました。経糸は全てレア―・シープ、横糸はコットン。それも初めての織物と言うので凄い!インスタhomesteadstaffordでお母さまとそのポンチョを着ている写真があるので是非見て見て下さい!

地道に意味ある活動されている団体と、それを存分に楽しんで使う作り手と・・・ただのお買い物ではなく、アメリカの羊事情を知ったとても充実した1日でした。

2日目に続く・・・・

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